特別寄稿
後輩助産婦に「助産術」を教える
中根 直子
1
1日本赤十字社医療センター分娩室
pp.431-435
発行日 2001年5月25日
Published Date 2001/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902649
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ある時,全く畑違いの仕事を持つ年上の知人が,教えを請われたときの体験を話してくれました。彼女は個人の感性や人脈を糧に,フリーランスで仕事をしているのですが,その業界では,自分の技術を他人に教えるというのは異例なことのようです。「プロには教えないけど,ボランティア活動に活かしたいという,やる気のあるアマチュアだったから」という理由で,無償で一から十まで技術を伝えたことがあるようですが,やる気のある若い人との関わりは想像以上に良い刺激になったようでした。そして「ふと思い出したのが……」と前置きして,一息つきました。彼女の頭に浮かんだことは,大学時代にノートに書いたエリクソン発達心理学〈壮年期の課題:次世代を育てる〉だったというのです。「自分もそういう年代になったんだと思って,人生の意義を妙に納得したんです」と笑っていました。
彼女の言葉は,私にはとても新鮮に響きました。ここ数年来,学生や新人スタッフの教育にいつもかかわっている身としては「人に教える」ことは,あまりにも日常的で,人生的な意義にまで考え及んだことがなかったからです。年々歳々たくさんの学生や新人に出会う機会をいただいているということは,ものすごくラッキーなことなのかもしれない……。助産婦をしているだけで,かなりハッピーな人生だという自覚はありましたが,もう一つ,ハッピーなことが増えた感じです。
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