連載 りれー随筆・175
教員3年目の春に
古礒 祥子
1
1鳥取県立倉吉総合看護専門学校保健助産学科
pp.354-355
発行日 1999年4月25日
Published Date 1999/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902156
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初心者の想い
親子3人で夕餉の食卓を囲んでいると,電話のベルが鳴りました。「先生,初産婦さんの入院がありました。子宮口○cm,陣痛の状態は……」。実習中の学生からです。私が専任講師として担当している助産学実習では,学生の分娩介助3例目までは,教員が立ち会うことになっています。「いつ帰ってくるの?」と不機嫌そうなわが娘とそれをなだめる夫に見送られ,素早く実習病院へと向かいます。
私が分娩室に入ると,先程の電話の主がいつもとは違う緊張した面持ちで産婦さんの腰をさすっていて,表情が少し和むのが感じられました。いよいよ分娩。学生の分娩介助を見守る私の心拍数も,分娩監視装置から聞こえてくるベビーの心拍数と同じくらいに上昇します。きっと,学生も同じでしょう。やがて分娩室にベビーの元気な産声が響き渡り,産婦さんや家族の感嘆の声,スタッフからの祝福の声が交錯し,心からほっとする瞬間が訪れます。
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