特集 周産期のアロマセラピー
妊娠中のアロマセラピー
鮫島 浩二
1
1中山産婦人科クリニック
pp.109-118
発行日 1999年2月25日
Published Date 1999/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902105
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はじめに
お産のときに,その苦しみからパニック状態になった産婦の話をまず紹介したい。彼女は分娩極期のあたりで半狂乱の状態になり,大声をはり上げ,手足をばたつかせて抑えつけざるを得ない状態になった。そこで,私は肌の温もり程のお湯に数滴の真性ラベンダーの精油を落とし,タオルをつけてしぼり,彼女の顔にかぶせた。そして,陣痛の合間をみて,母親学級で書いてもらっていた「分娩時の要望書」を彼女に聞こえるように大きな声で読み上げた。彼女が平静に戻るのに時間はかからなかった。やがて進行期の頃のように,再び陣痛を受け入れ,子宮口をイメージしながらリーブ法の“ソーン”の呼吸ができるようになった。それからは,二度と取り乱すことなく,自分で計画した出産を見事な落ち着きの中でやり終えた。
ラベンダーの精油は,彼女が母親学級で仲間と一緒に嗅いでいたものであった。のちの彼女の話によると,このラベンダーの香りで,まず母親学級の仲間を思い出し,共に「いいお産をしようね」と誓いあい励ましあった日々と,母親学級で学んだ内容が走馬灯のごとく駆け巡り,「みんなが応援してくれている,がんばらねば」という思いが急速に高まり,平静を取り戻したとのことだった。
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