今月のニュース診断
輸血拒否—生命の存否に関わる自己決定
斎藤 有紀子
1
1明治大学法学部(法哲学・生命倫理)
pp.356-357
発行日 1998年5月25日
Published Date 1998/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901925
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エホバの証人輸血拒否訴訟
信仰上の理由から輸血を拒否していた女性が,「無断で輸血を受けて,信教上の良心を侵害された」と訴えていた裁判で,このほど,医師側が敗訴する逆転判決が下された。
東京高裁は,「医師が同意を得るについては,患者がその判断をする上で必要な情報を開示して患者に説明すべき」「(患者の)同意は,各個人が有する自己の人生のあり方(ライフスタイル)は自らが決定することができる自己決定権に由来する」「医師は,ほかに救命手段がない事態になれば輸血する,という治療方針の説明を怠った」として,一審の判決(生命を救うためには同意がなくても輸血できる)を覆し,医師と国(病院経営の主体)に損害賠償を命じている(朝日新聞2月10日「同意得ず輸血,賠償命令:『エホバの証人』東京高裁が逆転判決,患者側に自己決定権」)。
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