連載 りれー随筆・142
自分を見つめ直して
岡本 雅弥
1
1幸の鳥医院
pp.510-511
発行日 1996年6月25日
Published Date 1996/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901496
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生涯の仕事
この2年間,39年生きてきた中で最高に喜怒哀楽を経験したように思う。
私が15歳のとき,両親が離婚し,私は母と二人暮しになった。看護婦をしていた母は,「これからの女性は,技術を身につけることが大切。何があっても自分や家族の生活が守れるように将来を考えること」。これが,母の口ぐせだった。将来に向けて確固たる夢を持たなかった私に,耳にたこができるほど言い続けてくれたおかげで,私は助産婦の道を歩み,しあわせな家庭,平和な世の中を作るのは助産婦なのだとまで思うまでになり,そのやりがいを見いだした。そして,15年間病院で多くの経験を得ることはできたが,多くの助産婦が感じるジレンマに私も落ち込んだ。任務中心の業務で助産婦の思うとおりの業務ができないこと,医者との正常産に対する考え方が違うなどの理由により満足感を感じなくなったのである。自分の理想を追えば追うほど仕事をするのが苦痛になり,心身共に疲労し,感受性までなくなってしまう状態になった。
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