特集 助産婦とコウ・カウンセリング—聴く力を身につけて深い関係をつくる
創造的プロセスとしてのカウンセリング
岸 良範
1
1埼玉医科大学短期大学
pp.299-304
発行日 1996年4月25日
Published Date 1996/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901452
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
援助者も自らの全体性を表現することになる
カウンセリングや心理療法の世界は,ときにはなにかしらうさんくさいものとしてみられることがある。心理学や精神医学などを学んだ者に,説得されたり,操作されたり,決めつけられたりするのではないかという不安や疑念が湧くのだろう。また,より多くの専門的知識をもった人間に,屈服させられてしまうのではないかという不安もある。
そのようなさまざまな疑念から,従来の専門家によるカウンセリングや心理療法に対して,さまざまなアンチテーゼが投げられている。それらの1つとして,この特集で取り上げられているコウ・カウンセリングもあるのであろう。その問いかけや問い直しはとても有効なものであると考えるし,またそれは,いわゆる「プロ」「アマ」を問わず,人とひととがどのような形であれ出会い,向き合い,話し合い,言葉にならない気持ちを伝え合うということに重大な意味を感じている人々にとって,とても創造的な議論を生み出すはずだ。なぜなら,お互いのかかわり合いの中での仕事は常に試行錯誤の中で成長してきたからである。新しい理論はなにかを土台とし,賛成であろうとなかろうと,ある考えに触発されて登場してきているわけである。だからこそ,逆に言えば従来の理論の中の主要なテーマは,常に探索されねばならない。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.