特集 低用量ピルのすべて—女性が避妊の主人公に
低用量ピルとはなにか
北村 邦夫
1
1(社)日本家族計画協会クリニック
pp.183-191
発行日 1996年3月25日
Published Date 1996/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901431
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1994年9月にエジプト・カイロで開催された国連主催の国際人口・開発会議において一躍話題となった言葉が「リプロダクティブ・ヘルス」。わが国では,「性と生殖に関する健康」と翻訳されている。WHO(世界保健機関)は,従来から広く使われている健康の定義を踏まえて,リプロダクティブ・ヘルスを「単に生殖の過程に病気や異常が存在しないだけではなく,生殖の過程が身体的,精神的および社会的に完全に良好に遂行される状態」と定義している。生殖の過程とは,セックス,妊娠,不妊,避妊,中絶,出産,エイズを含めた性感染症,育児までを含むと考えられるから,今回の特集のテーマである「低用量ピル(以下「ピル」)」に代表される避妊は,リプロダクティブ・ヘルスの重要な課題のひとつといえよう。それにもかかわらず,わが国の現状はといえば,エイズを含めた性感染症予防の最大の武器であるとはいえ,避妊効果に疑問を抱かずにはおれないコンドーム一辺倒であり,避妊が「身体的,精神的,社会的に完全に良好に遂行される状態」とは言い難い。
本稿では,早期認可が待たれるピルが,リプロダクティブ・ヘルスの観点から,わが国女性にどのような影響を及ぼしていくかについて考えてみたい。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.