MEDICAL SCOPE
胎児・新生児の脳内血流低下のとき
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.701
発行日 1995年8月25日
Published Date 1995/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901308
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早産未熟児の脳性麻痺の大きな原因であるのう胞性脳室周囲白質軟化症cystic PVL(periventricular leucomalacia)については先月号で述べました。そして,この予後不良な疾患の発症原因は,脳内の血流の低下による脳白質の栄養障害だとされています。それでは,どんな場合に胎児や新生児の脳内血流が低下するのでしょうか。以前にもこの欄で述べましたが,このcystic PVLは出生後の新生児期に発症するばかりでなく,出生前の胎児期にすでに発症していることがわかっています。
そこで,今月はその原因となる脳血流の低下はどんなときにおこるかを考えてみましょう。まず胎児期のことですが,胎児期では分娩時とそれ以前の切迫早産時の2つの時期に発症の可能性があります。分娩時,つまり早産の分娩時に,分娩第2期の胎児娩出期に急に胎児心拍数が徐脈になることがあります。いわゆる遷延性徐脈といわれているようなときです。こんなときは当然ながら胎児の血液循環動態は障害されているので,脳内の血行は正常時とは大きく異なっていることでしょう。胎児が低酸素状態で胎児仮死になると,脳内の血流は遅くなり,うっ血状態になることは明らかです。したがって,早産例では,分娩第2期に遷延する徐脈をおこすような状態をさけない限り,cystic PVLの発症予防はできません。
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