私と読書
現代文明を人間本性の欲望との関係で分析—『生命観を問いなおす—エコロジーから脳死まで』を読んで
萩原 なつ子
1
1東横学園女子短期大学
pp.168-170
発行日 1995年2月25日
Published Date 1995/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901197
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1978年にイギリスで誕生した「試験管ベビー」のニュースに,私も大変ショックを受けた1人でした。SFの世界の出来事だと思っていたことが現実になって私たちの日常世界に入り込んでくる,そんな印象を受け,科学技術はいったいどこまで突き進むつもりだろうという恐ろしさも同時に感じました。
この『生命観を問いなおす』の著者は生命の誕生に技術が介入するとどうなるか,また人の生命の最後に技術が介入するとどうなるかを冒頭から淡々と語ってゆき,新しい生命論,知性を展開することの重要性を説いています。さらに,「私たちが,現代,生命に介入している仕方と,地球上の自然に介入している仕方は,非常によく似ているのではないか」と問いかけ,地球的規模の環境破壊の問題との連関性を取り上げ,このエコロジーの危機の解決に向けての思想,行動のある種の危うさ,例えばリサイクル運動,ディープエコロジー,エコフェミニズム,エコナショナリズムにも言及していきます。これもある,あれもある,これとあれはこういうつながりがある,はっきり言って盛りだくさんです。
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