MEDICAL SCOPE
母児間の血圧調節の話題
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.917
発行日 1994年11月25日
Published Date 1994/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901141
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胎児が低酸素状態に置かれるといったストレスに見舞われると,アンギオテンシンIIとかバゾプレシンという血圧を上げる昇圧物質を産生することは,以前からわかっていました。胎児にストレスがかかると血圧は上昇し,胎児はこういった自分の身を守る生体防御的機構のために,脳と胎盤へは多量の血液を送り込むことができるのです。このことが1つの不思議だったのです。
胎盤の血管壁には自律神経などの組織が全くないので,胎盤の血管は自律神経の作用で収縮したり拡張したりすることはできません。したがって,胎盤の血流量の調節,つまり,胎盤循環は胎盤自身では調節できないのです。だから,まともに考えると,胎児がストレスを受けて,そのためにアンギオテンシンIIやバゾプレシンなどの昇圧物質を産生すれば,それらは当然ながら胎盤にも作用して胎盤血管を収縮させ,血流量も少なくしていなければなりません。それなのに,実際はこの反対で,胎盤には血流がプールされてくるのです。これはどうしてなのでしょうか。
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