特集 マイナートラブルをとらえ直す
マイナートラブルとは何か
堀口 文
1,2
1慶應義塾大学産婦人科
2メルボルン大学公衆衛生・地域医療学
pp.711-719
発行日 1994年9月25日
Published Date 1994/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901093
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はじめに
マイナートラブル(minor trouble)とは小さな問題という意味で,妊娠に伴って生ずる不快症状を指す。これは重大な器質的疾患や合併症はないが,妊娠による体の変化や心理的要因によって自然の回復が可能な身体と精神の症状が起きるもので,非妊時とは異なった訴えや自覚的および他覚的症状をきたすため,妊娠中の気分や日常生活を障害する。その発生頻度や訴えの種類が多いにもかかわらず,妊娠の経過中に自然に軽快することが多いので,あまり重要視されていない。そのため,妊婦の不快症状についての基礎的および臨床的研究は未だ少なく,今後の研究が待たれる。
マイナートラブルは,妊娠によって生ずる体の生理的変動が,また精神的変化が不定愁訴の原因となっている場合が多いが,そのほか,妊娠による心理的葛藤や不安などが自律神経症状やその他の精神的および身体的症状を起こしやすくしている。したがって,そうした妊婦のケアや指導に際しては個々の生物学的(身体的),精神的および文化社会的要因についてよく理解する必要がある。
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