MEDICAL SCOPE
新生児仮死の診断に関する今日的見解
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.86
発行日 1994年1月25日
Published Date 1994/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900954
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「新生児仮書死とは何ですか」ときかれたら皆さんはなんと答えるでしょうか。つまり新生児仮死の定義です。新生児仮死ということばはasphyxianeonatorumというラテン語を訳したものです。asphyxiaのはじめのaは「何々がない」という否定のことばで,sphyxiaは呼吸です。neonatorumは「新生児の」という意味ですから,出生した新生児で呼吸がない症例,つまり出生しても泣かない状態と解釈されます。
ことばの意味や臨床的な症状からの考えではこれでいいかもしれませんが,医学的にはどうもすっきりしません。今日的には新生児仮死とは「分娩時の低酸素症とそれによる代謝性アシドーシス」と定義されるようになりました。つまり,分娩中に何らかの原因で胎児に低酸素症,すなわち胎児仮死の状態が発生して,そのために代謝性アシドーシスを起こした状態で出生したときのことをさすわけです。そうすると,出生時に新生児仮死を診断するためには,新生児が低酸素症と代謝性アシドーシスになっているということを診断しなくてはならないことになります。
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