ちょっとサイエンス
お産と痛み,個人的体験③
牧 智子
pp.84
発行日 1994年1月25日
Published Date 1994/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900953
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陣痛促進剤の恐怖
前回は,破水したのになかなか陣痛が始まらなくて心配したというところまで書きました。私が出産したのは1992年の2月のこと。1989年ごろから陣痛促進剤による被害の実態が新聞紙上でも取り上げられていましたので,陣痛を待つ間,私は不安でいっぱいでした。オキシトシンだのプロスタグランジンだのという「怖い薬」の名前が頭の中でうずまいていました。
陣痛促進剤の能書きが改訂されて,その危険性が強調されたのは,私が出産した年の10月のことです。こうした改訂を厚生省に迫ったのは被害を受けた母親たちです。被害を受けた母親といってもそうした運動に積極的にかかわれたのは子どもを失った人たちでした。陣痛促進剤の影響で障害をもって誕生した赤ちゃんの母親の場合,運動どころではなかったものと思われます。改訂を報じる新聞を読みながら,安易な投薬のために被害をうけた人たちが我がことのように思え,つらい気持ちになってしまったものです。
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