特集 妊娠中毒症—最近の考え方
妊娠中毒症とHELLP症候群
岡宮 久明
1
1杏林大学医学部産科婦人科学教室
pp.496-501
発行日 1990年6月25日
Published Date 1990/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900113
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ヘルプ(HELLP)症候群とは
1982年,Weinsteinが,妊娠中毒症のなかに溶血(Hemolysis),肝機能異常(肝酵素上昇:Elevated Liver enzymes),血小板減少(LowPlatelet count)を来して,放置すると母児の予後が極めて悪い特殊な病態を示すものを見出し,その頭文字(ゴシック体で示した)をつないでHELLP症候群として報告した1)のが最初で,本症候群にしばしば産科領域以外の診断・治療がなされていることが母児の予後を悪化させていると警告した。
本症候群の存在そのものはかなり以前から知られており,古くは1954年にPritchardら2)が子癇症例3例に,また,1972年にはMckay3)が1例の死亡例を含む4例の子癇症例に本症候群と同じ症状を認め報告している。また,昔から教科書的には子癇発作の前兆として眼華閃発,頭痛とともに胃症状という記載があり,あるいは胃症状を伴う子癇は予後が悪いといわれていたことを考えると,これらの中にはHELLP症候群が含まれていた可能性が十分考えられる。平成2年2月1日発行の日本産科婦人科学会雑誌4)に,妊娠中毒症病型分類改訂についての妊娠中毒症問題委員会提案が掲載されており,註として以下の文章がある。
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