特集 避妊指導
若い人のための避妊指導
北村 邦夫
1
1(社)日本家族計画協会市谷クリニック
pp.113-119
発行日 1990年2月25日
Published Date 1990/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900027
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はじめに
「避妊さえしていれば,高校生同士が性関係をもってもよい」と考えている高校生が6割に達しているというのに,現在性関係をもっている者でも「いつも避妊している」のは38%に過ぎないという調査結果が新聞報道された。若年者の性意識や性行動はますます加速化しているものの,その結果起こるであろう妊娠という問題には関心がきわめて薄いだけでなく,家庭・学校・社会の対応が大きく立ち遅れている。かりに妊娠が起こっても人工妊娠中絶を受けるのが当然と考えている。出産に至った例をみても,妊娠・分娩・産褥期における異常の頻度が高く,教育を受ける機会を逸し,安定した職業につけず,収入も十分でないため離婚や育児放棄などの悲惨な結末を迎えることが少なくない。
このような現実を考えるとき,望まない妊娠のために苦悩する若年者を一人でも多く救うことができたらという願いに駆られるのは私だけではあるまい。若年者の性意識と行動が,大人たちの思惑とは裏腹に加速の一途を辿っている今日,彼らに対する避妊指導は避けて通ることのできない大きな課題となっている。しかし避妊を語ることは若年者の性行動を容認することにはならないかとか,経口避妊薬などの確実な避妊法を提供できない現状では,望まない妊娠を本当に回避し得るかどうか疑問視する声もあがっている。
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