連載 新生児学基礎講座[臨床編]・7
新生児の養護と管理②—ハイリスク児
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学母子総合医療センター新生児部門
pp.870-875
発行日 1989年10月25日
Published Date 1989/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207712
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1.ハイリスク新生児(high-risk neonate,危急新生児)
1)ハイリスク新生児とは
ハイリスク新生児の定義は単に異常な新生児という意味から,生命に対する危険が高い既往歴を持つ新生児,さらには統計学的に死亡や罹患率が高い危険因子を有する新生児と,成書や学者によって異なったニュアンスの表現が使用されている。著者は「その既往および所見から児の生命および予後に対する危険が高いと予想され,出生後のある一定期間観察を必要とする新生児」をハイリスク新生児と定義するのが正しいと考えている。すなわち,ハイリスク新生児なる言葉を用いるからには,ある疾患を有する,あるいはある特殊な病気を発症することが明らかである新生児とは異なった意味と考えなければならない。異常な所見を有する児をハイリスク児と定義するのは適切ではない。母親が糖尿病であったり前期破水などの既往があるので,児に低血糖や感染症などの問題が起こる可能性が高く,ハイリスク児として観察されるのがハイリスク新生児である。これらの新生児は,最終的には異常は認められずに正常新生児として退院することが稀ならずある。ハイリスク新生児という言葉を使用する背景には,一見正常そうにみえる新生児の中に重篤な疾患または問題を起こしうる可能性の高い児が含まれており,それらの児はそれなりの観察をされなければならないという注意を喚起する意味が含まれているのである。
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