Medical Scope
ルテインのう胞
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.431
発行日 1989年5月25日
Published Date 1989/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207625
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妊娠初期に卵巣のう腫のような卵巣腫瘍ovarian tumorを合併していたら,一般的な診療方針として,妊娠10週以後に手術的に切除するのがよいとされてきました。皆さんも,そのような症例を何例かは経験していると思います。さて,今日では,妊娠初期の診察の非常に多くの機会に超音波断層診断が用いられ,それによって多くの情報を得ることが可能になりました。もし卵巣に腫瘍があれば,この超音波断層法では非常によく診断できます。ところが,この超音波断層法が普及するにつれて,妊娠初期の女性の卵巣のう腫合併例が一段と増えてきてしまいました。施設によっては,手術例もかなり増えたというところもあるくらいです。
ここで,もう一度,妊娠初期の卵巣のことを思い出してみましょう。妊娠が成立すると卵巣には妊娠黄体ができ,そこから妊娠を続けていくために必要な黄体ホルモンを分泌することになるので,卵巣は大きく腫大し,妊娠黄体の部分は水分を含み,小さい卵巣のう腫のような形になります。これをルテインのう胞luteincystと呼ぶことは昔習ったとおりです。このルテインのう胞は,黄体ホルモンを多く分泌するような症例,たとえば多胎妊娠例や胞状奇胎などでは,正常の単胎妊娠例よりかなり大きくなるということも知られていました。
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