特集 10代の妊娠・出産
統計からみた10代妊娠
林 謙治
1
1国立公衆衛生院衛生人口学部
pp.784-788
発行日 1988年10月25日
Published Date 1988/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207478
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昭和23年に優生保護法が成立して以来,届け出人工妊娠中絶件数はピーク時で120万件を数えたが,その後減少の傾向がつづき,最近では50万件程度に落ち着いている。しかし年齢別に仔細に見ると,ほとんどの年齢群では程度の差こそあれ,こぞって中絶件数が減少しているのに対し,10代だけがここ10年間倍以上の増加を示している(表1)。また,10代の出産数は中絶件数に比べると少ないが,ここ数年やはり増加傾向が見られる(表2)。ちなみに昭和61年の出産と中絶件数の両者を合わせると,20歳未満女子人口千人に対しほぼ10件の計算になるが,中絶の届け出もれを入れると約2倍,すなわち50人に1人の割合になるであろうと議論されている。
しかしながら,わが国の数字を欧米諸国と比較しても決して高いとは言えない。たとえばアメリカの場合15〜19歳女子人口千対の出生率は,1982年で57と実にわが国の13倍近くである。スウェーデン,西ドイツ,フランスなどでも2〜4倍程度はある(表3)。日本の中絶の届け出もれを報告数の2倍と仮定しても,10代の中絶推計数は8万5,000件程度であり,わが国の倍の人口を有するアメリカで10代の人工妊娠中絶数が46万件というのもいかにも多い(表4)。
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