Medical Scope
胎児の乳糜胸(先天性乳糜胸)
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.604
発行日 1988年7月25日
Published Date 1988/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207430
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胎児水腫hydrops fetalisという胎児が全身にいちじるしい浮腫を示して死亡する疾患は,皆さんよく御存知のことでしょう。しかし,この表題の「先天性乳糜び胸」という疾患はいかがですか。これも胎児時代に胸水がたまる疾患で,その点では胎児水腫とちょっと似ているのです。
胎児水腫は,Rh式血液型不適合妊娠による胎児溶血性疾患や,梅毒,ウイルスの胎児感染などで,急激に胎児が貧血におちいったときの心不全状態としてでき上がってくる疾患ですが,実は非免疫性胎児水腫といって原因がよくわからないままに,胎児に急激な貧血がおきて発症することの方がずっと多いのです。今日では,エコー・ガイド下に胎児の胸腔や腹腔を穿刺して,胸水や腹水をぬき,胎児の腹腔内に濃縮血を注入する子宮内胎児輸血が容易に行なえるようになりました。そして,すでにこの方法で何人もの生命が誕生しています。
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