連載 いのちの詩を読む・3
眼と眼の出合い(火の眼をした男/白石かずこ)
新井 豊美
pp.176
発行日 1988年3月25日
Published Date 1988/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207331
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今、白石かずこほどスケールの大きい詩世界を持つ詩人をわたしは知らない。
『聖なる淫者の季節』『艘のカヌー未来へ戻る』など、この詩人の代表作は数千行の長さで書かれた言葉の大シンフォニーを思わせるものがあるが、実際の活動の舞台も日本だけでなく、地球上の各国に広がっている。カナダ生まれのこの詩人にとって、日本語も世界の言語の多様判の一つであるだろうし、その上で更に.旺盛な生命力が自由と精神の広がりを求めて過去、現在、未米の時空に幻想をはばたかせてゆくとき、そこにはすでに何の障害もないと思われるからだ.たとえば.九六〇年代、この詩人がはじめて「男根」を詩の言葉に登場させた〈事件〉は今も記憶する人が多い筈だが、彼女にしてみれば、それをセンセーショナルに受止める意識の古さの方がより驚きだったのではないだろうか。そういうところからも白石かずこは戦後の女性解放の先駆者であり、特別な位置にある詩人ということができるだろう。
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