連載 知っておきたい産科免疫学の話・2
母体免疫系は非妊時に比してどう変化しているか?
竹内 正七
1
,
高桑 好一
1
1新潟大学医学部産婦人科
pp.429-433
発行日 1987年5月25日
Published Date 1987/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207139
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はじめに
前回のこのシリーズでは,一般的な免疫学およびそれと産科領域とのかかわりについて説明しました。そのなかで,移植免疫学の立場からみると,胎児は母体にとって本来は生着しないはずの同種異系移植片であるという話をしました。しかしながら,現実には,胎児は母体からの拒絶を受けることなく生着・増殖すなわち発育を続け,時期がくればこの世に母体とは全く別の人間として生を受けるわけです。
このことはきわめて当たりまえのこととして理解されていますが,上述の移植免疫学という学問から眺めた場合,非常に不思議な現象となります。そして,母体が胎児を拒絶しないために,妊娠した女性の体のなかではきわめて巧妙な免疫的適応現象が生じているものと考えられています。なぜ胎児が母体から免疫的に拒絶されないのか,という疑問に対する完全な回答はまだ得られていませんが,最近の生殖免疫学における研究の進歩により,その糸口はつかめています。そこで今回は,妊娠に伴い女性の免疫系がどのように変化しているのか,という点についてお話したいと思います。
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