特別寄稿
産婆の実践活動と歩みから学ぶこと(1)—大正・昭和前半期に活躍した産婆への聞き取り調査を通して
高岡 スミ子
1
,
古崎 すみえ
2
1福井県保健婦助産婦看護婦協会
2福井県立短期大学看護科
pp.417-422
発行日 1987年5月25日
Published Date 1987/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207136
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はじめに
高齢化社会を迎え,あらゆる場であらゆる人々に対する,従来とは異なった柔軟できめ細かな看護活動が期待されている。今,この社会的期待を看護者個々人が自らの問題として引き受けようとするとき,看護者が抱えている種々の問題—教育制度,看護制度,労働問題,社会的地位や評価の低さなど—が表面化してくる。私たちは,今いちど自らをととのえ,これらの問題に挑戦していくためには看護者自身の歴史をふり返る必要があると強く感じ,福井県看護史1)の編纂に取り組んだ。今月から4回にわたって連載する大正・昭和前半期に活躍した産婆への聞き取り調査は,福井県看護史(旧制度編)の継続研究の一部である。
私たちは産婆の実践活動や歩みに次のような関心を持った。産婆は,看護婦・保健婦と比べて,早くから職業として自立し,職能団体「産婆会」を結成して,自らの身分保障のみならず,妊産婦・乳幼児の保護を社会に訴える運動を展開している。このような職種の活動の場が家庭から施設へと移動したことで,なぜ産婆職の急激な減少を招いたのか疑問になった。この疑問をきっかけとして,私たちは看護の現状に様々な危機感を抱いた。高齢化社会に対応するために従来とは違った看護活動を要求されているにもかかわらず,看護者の反応は遅く,かつ従来の活動に縛られて広がつていかないからである。このままでは看護者の社会的存在意義は薄くなり,その結果として看護者の減少を招きかねないのでは,と思われた。
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