特集 分娩直後の出血:その病態・看護診断・救急処置
助産婦に必要な異常出血時救急処置の知識
野村 紀子
1
1北里大学病院母性小児系看護科
pp.475-482
発行日 1986年6月25日
Published Date 1986/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206892
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はじめに
産科領域における救命救急事態は,主として出血によるものが多い。これは予防が可能であり,早期に的確な治療が行なわれると,劇的に回復が可能である。しかし,その処置や治療が適切でなければ,目に見えて悪化し,死に至ることも多い。周産期医学が発達している今日でも,出血による妊産褥婦の死亡は減少していない。なかでも,分娩直後の出血は看護の目と治療によるところが多く,助産婦に課せられた責任は大きいといえる。しかし,現実には出血を危険視し,その対策を考慮しながらも,そうした緊急事態に対応できる助産婦は少ないのではないかと考えられる。
助産婦は,その役割は正常の経過をたどる妊産褥婦や新生児のケアが中心ではあるが,こうした緊急事態にも対応できなくてばならない。しかし,異常出血の場合に頻繁に接する機会がなければ,なかなかトレーニングされてはいかない。緊急事態発生時には,ある種の知識と技術が必要とされる。たとえ,正常な経過で終了するであろう分娩に接していても,たえずこうした緊急場面を想定して,産婦や褥婦の看護にあたる必要がある。妊産褥婦の看護のなかで起こりうる異常な緊急事態は,出血に限ったことではない。すべての異常な緊急事態に対応できる助産婦が必要であると考えるが,今回は出血に限り,助産婦として考え,介助することの必要事項について述べてみる。
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