連載 先輩に学ぶ・5
しなやかに,地域にとけこんで—東京都福生市の桂川イヨさん
小川 富士子
1
1慈恵看護専門学校
pp.416-419
発行日 1986年5月25日
Published Date 1986/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206878
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女性が主体性をもって「自らマネージする出産」「創り上げて行く出産」いや,そう大上段に振りかぶって主張しなくても,少なくとも自分自身が産むのだという意識がもてたら,出産を女が背負う苦痛というとらえられ方から解放されるだろう。そのために産婦にはまず十分な情報が与えられること,そして産婦の主体性を引き出す援助者としての助産婦がそこに存在する,そんな出産のありかたをイメージに描くのであるが,しかし,一方現状に眼を転ずれば,余りにもほど遠い現実にむなしさを感じるのは自分の未熟さもからまってのことだろうか。病院という大きなシステムの中では理想にすぎないと片づけられてしまうのか。理想はあくまで理想にすぎないと。こんな自問自答を繰り返していた時,地域の中で自らの理想を目指し活躍されている桂川イヨ先生にお会いできる機会を得た。
東京都福生市熊川駅の近く,このあたりは東京といってもまだまだ緑が十分に残り,ビルの姿はない。その素朴な家並みの中に先生の開業される助産院はあった。助産院の内部は外観から想像したよりずっと広く,若さと新しさが伝統の中に息づいているようだった。
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