連載 おとめ山産話
妊婦とアルコール
尾島 信夫
1
1聖母女子短期大学
pp.354
発行日 1986年4月25日
Published Date 1986/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206864
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過日,あるテレビ番組で,妊婦がアルコールを飲んだ場合に,胎児に対してどういう影響があるかということを,わかりやすく解説していた。これを見た女性は,妊娠したらアルコールを飲まなくなるだろうから,私としては良い放送だと思っているうちに,終りごろになって誰であったか産科の有名な先生が登場して,アルコールはそれほど心配するには及ぼないし,夕食に少し飲むことは食欲増進や循環をよくするような利点もあって,むしろ奨めることもあるというような話をされた。
ハテナ? そんなこと言ってよいのかしらと,私自身の頭の方もアルコールで少しおかしくなったのかなと疑問がわき,では一般の,妊婦指導書には何と書かれているかしらんと,ためしに私の旧著と同一タイトルで近ごろ他社から出版された本をとり出して調べてみると,ある先生の署名いりでタバコと酒の害を一括して説明してあった。しかし,そのあとに「妊娠中にタバコや酒を愛用したからといってすぐに胎児が死亡するということはなく,寒い夜の就寝前とか,気分の重い時などに少量を用いるのならべつに障害にはなりません」とあって,テレビで言っていた意見と大同小異である。
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