特集 この10年--助産婦・出産・女
自然に即し,イノチを重んずる社会へ—モノ優位・性役割社会からの飛翔
菅 孝行
pp.32-37
発行日 1986年1月25日
Published Date 1986/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206796
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一通の「質問状」が舞い込んだ!
1985年6月に「女性の現在と未来」という『ジュリスト』の増刊が出た。その中に「男女の平等とは何か」という筆者の書いた文章がのった。それは,性別役割分業を解体し,男も女も,イノチとモノの生産(家事・育児と社会的労働)から共にへだてられることのない関係を,制度的にも生活流儀の上でも保証することが必要だという,『女の自立・男の自由』(毎日新聞社刊)以来の自分の主張を整理してのべたものだった。それからしばらくして,筆者のもとに未知の男性から,脅迫的質問状とでもいうべきものが舞い込んだ。
性別役割分業をなくすには,1日4 時間,週24時間労働を実現し,男も女も働き,男も女も家事・育児ができるようにすべきだという私の主張に対して,手紙の主は,私が4時間労働で今生活していると断定した上で,どうして1日4時間で生活の糧が得られるのか,と詰問してきた。4時間以上働いていたら,責任をとってもらうぞ,とも書いてあった。4時間労働を主張して,それをやっていないなら,それは私が空論家で言行不一致のしるしだといいたいらしい。(またもし言行が一致していたらそれが可能な私は,特権階級だ,といいたいのだろう。)性別役割分業を廃棄しようという提案がよほど腹にすえかねたとみえて,ひどく混乱しているため,この人には,現在の,個人の生活状況と将来実現されるべき制度やくらしの流儀の提案の区別がついていないようだった。
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