連載 トラウマからの回復―患者の声が聞こえますか?・2
Let's Enjoy Survivors Life!―虐待ママからの飛翔
福井 和絵
1
1NPO法人JUST(日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン)
pp.427-430
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101808
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「わが子を虐待してしまう」と,Sクリニックの診察室で訴えてから14年が過ぎ,当時1歳半だった娘が,高校入学の春を迎えた.
あれから14年も生き延びて,こんな日が来るなんて,当時は想像もできなかった.大げさな表現ではなく,本当に,わが子を殺してしまうのではないか…と思ったのだ.また,小さな娘に暴力をふるってしまうたび,自分のことを「母親失格だ.こんな私は,死んだほうがよい…」と考え,自殺の方法について想いめぐらしながら生きた日々だった.
今振り返ると,育児のつらさや,自分の親としての至らなさばかりに目が向いて,「かわいい」とか「楽しい」とか感じることを自分に禁じていたかのように過ごしてしまったことが残念で仕方ない.しかし一方で,そのプロセスから得たものも確かにあって,私のその体験が誰かの役に立つのなら,語っていこうと思う.
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