連載 教育評価のはなし
標準偏差の意味—その2
岸 学
1
1東京学芸大学
pp.1001
発行日 1985年11月25日
Published Date 1985/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206767
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前回は,標準偏差がどのようにして求められ,また,どういう意味があるのかについてお話ししました。今回は,標準偏差を読みとる際に,どのような点に注意したらよいかについて,具体例をあげて考えてみます。
いま,A,Bの2クラスにテストを実施したところ,それぞれの平均は50点と40点,標準偏差は12と25であったとします。どちらのグループの成績がよいでしょうか。もちろん,単純に比較すれば,50点と40点ですから,A>Bとなります。しかしながら,統計的にみると必ずしもA>Bといってよいとは限りません。そして,このことに大きく関係してくるのが両グループの人数と標準偏差の値なのです。上例では,Bの標準偏差はAの2倍以上になっています。AとBの得点分布を示すと図1のようになるでしょう。分布からわかるように,最頻値をみるとA>Bとなりますが,Bクラスの中にはAよりも高得点をとった者がかなりいます。また,Bには低得点者も多く,単純に平均値のみで両群の差を比較できないことは一目瞭然です。つまり,両群の成績差を判定する以前に,教えかたに違いはなかったか,テストの実施状況は同じだったか,さらにはクラスと教えかたとの相互作用,すなわち俗にいう相性のようなものの影響はあるか,両クラスの基礎学力はもともと同レベルなのかなど,いろいろなことを十分吟味する必要があるデータであるといえます。
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