Japanese
English
Medical Scope
クローニック・プレパレイション
Chronic Preparation
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.631
発行日 1984年7月25日
Published Date 1984/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206491
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- Abstract 文献概要
今月はちょっと変わった話題をとり上げてみました。表題のchronic preparationクローニック・プレパレイションという言葉は,おそらくみなさんはおききになったことがないと思います。もし,知っている方があれば周産期医学のかなりの勉強家だと私がたいこ判を押します。周産期医学の研究では,胎児の子宮内での状態,たとえば,体温,心拍数の変動,血液の成分や血流の問題など,胎児の情報をできるだけ多く,自然に近い状態で知ることが必要になってきます。ところが,ヒトで実験はできないので,これらの研究はどうしても動物実験にたよることになります。それもなるべくヒトに近い動物,というとサルになりますが,値段が高かったりしてなかなか実験に使えません。そこで,今日では,性質がおとなしく,実験しやすい羊ややぎがこの種の動物実験に使われているのです。羊ややぎとヒトの胎児ばずいぶん違いますし,胎盤の構造も非常に違った点が多いので,胎盤での物質代謝などの研究はそのままヒトに通用はしないのですが,胎児のおよその生理的な一般状態などを知るには十分のようです。
外国で始められたこれらの動物実験では,初めは,胎児に直接に電極などをつけて,心電図をモニターしたり,血圧・体温などを測定していました。ところが,胎児に電極を装着するには母体を手術的に開腹し,さらに子宮をも切開して胎児に電極をつけるわけですから,大いに手術的侵襲が加わってしまいます。
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