特集 親と子のきずな--看護職の課題
新生児訪問指導の現場から母子への支援を考える
新堀 千恵子
1
1川崎市中原保健所
pp.487-491
発行日 1984年6月25日
Published Date 1984/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206465
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はじめに
保健所活動の一環として行なわれる母子保健指導は,母児の身体面の健康チェック,疾病や異常の早期発見,正しい育児の心がまえ作りとその方法の指導などを目的としている。ところが最近,保育のまずさによって児の発達が遅れたり,ゆがめられたりするという保育上の問題が一種の健康問題として指摘され,この面の指導の重要性が強調されてきている。いわば,育児をめぐる母子相互作用の問題である。
育児に興味をもてない母親は従来からあった。逆に熱心さのあまり,一般によいといわれている世話を一方的に行ない,子どもの反応や経過をみるゆとりをもてないまま児に健康問題が生じ,育児の自信を失う母親もあった。しかし近年は,それが少数の特別な母親の問題としてではなく,多くの母親にこのような傾向がみられるように思われる。そこで本稿では,新生児訪問指導をとおして把握した育児(母子相互作用)をめぐる問題から保健指導のあり方を考えてみたい。ややもするとマンネリになりがちな母子保健指導のあり方が改めて問い直され,妊娠・分娩・育児という流れを有機的に結んだ,一貫性のある保健指導が求められているように思われるからである。保健指導に対するこのようなニーズは,単に母親だけのものでなく,社会全体のものといってよく,看護者は,率先してこのニーズに応えていかなければならないと思う。
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