連載小説 田中志ん物語終りなき旅・19
第5章 光る海
島 一春
pp.76-83
発行日 1984年1月25日
Published Date 1984/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206388
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喪われゆくもの
志んが朝の回診にいくと,石塚艶子の部屋に2人の若い母親が集って世間話をしていた。出産をすませて後養生している母親たちの表情は明るく,話題はたいてい若いころの想い出話だが,その日は3人ともひどく深刻な顔をしている。
遠藤亜紀という26歳になる産婦がしきりに早口でしゃべっていたが,志んの姿を見た途端,話が途切れた。
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