同人放談
保存的処置のいろいろ
藤井 久四郎
1
1東京医科歯科大学
pp.381-382
発行日 1959年4月10日
Published Date 1959/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201950
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医者の行う処置にはいろいろの種類があつてどうあるべきだということは一概には言えない。ただ歳のせいか,私は無理が出来ないためか,病人のよろこびを,日常診療のたのしみと心得るようになつた。病人が手術を受けたのち心理的にも劣等感をもち,生活のよろこびが損われるようになつたのでは気の毒であるし,医者としても面白くない。私は近頃経験した保存的手術のことを思い出してみることにしたい。勿論読者の諸賢には何の参考にもならない独り言である。
1)はじめ妊娠したのが間質部卵管妊娠であつた若い婦人の場合:妊娠第3ヵ月に入つて喜んでいた婦人に突発する腹痛と貧血とが起つて子宮外妊娠を考えて開腹したが,右側の間質部妊娠であつた。普通ならば子宮を腟上部で切断するところであるが,うら若い婦人の将来を考えると,それを決行しかねた。そこで切除することを思い立つて,子宮の底部の右半部を注意して切除しはじめたが,卵胞が破れて胎児もとび出した。胎盤組織を残さないようにしたが,遂に子宮体腔に穿孔した。そこには厚い脱落膜があつたが,そのまま体腔を保存して縫合し,結局は胎嚢とともに子宮の右角を相当に広くとつた。しかし,左側の卵管から左側の体腔の大半は保存した。将来おそらく妊娠は出来ると思うが,その結果がどうなるか見守っている。かえつて禍のもとになるかどうか?
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