特集 母乳哺育の現況・Ⅰ
当院の母乳哺育指導の変遷とその考察
藤森 和子
1
,
保高 幸枝
1
,
根津 八紘
1
1諏訪マタニティークリニック
pp.532-537
発行日 1982年7月25日
Published Date 1982/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206048
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はじめに
近年,母乳哺育の必要性が叫ばれて以来,母乳哺育に対する意識の向上は,母親にとっても医療者にとっても目覚ましいといえる。しかし,母乳哺育に対する指導体制並びに母乳哺育率の上昇から派生する乳房炎や乳頭・乳輪部障害等の増加への対応の仕方,予防策はまだ十分とはいえない。また,現段階では母乳哺育推進はイコール乳房マッサージの域から脱し得ておらず,これから臨床で実際に指導に当たる助産婦学生等に対しても,育児を含む乳房管理部門の産褥教育は,かなり少ないと言わざるを得ない。また,最近やっと,採り入れられてきた傾向にあるものの,やはり乳房マッサージのむずかしさだけがクローズアップされるに過ぎず,結局,実際に患者(母親)を目の当たりにして,暗中模索を繰り返すのが実情ではなかろうか。
母親および医療者に普及されだした乳房マッサージは,その必要度が両者に認められたものの,需要と供給の関係が満たされず,母親中心であるべき指導が,逆に今度は母親を待たせたり,自分の施設で出産しない母親は後回しにしたりすることが当然のように,母親を離れ,マッサージ手技の取得が目的となってしまったような立場に立ち,横柄な対応が通用してきているようだ。
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