Medical Scope
新しい血漿交換法
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.721
発行日 1981年9月25日
Published Date 1981/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205909
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Rh式血液型不適合妊娠での母体感作例,すなわち,もう母体に抗体ができてしまっている妊婦に対しての治療は,羊水を検査してビリルビンが上昇してきたら,つまり,胎児の溶血性疾患が重症になってきたら,胎児の溶血性貧血を治療する意味で,胎児への輸血,子宮内胎児輸血が行なわれてきました。これはでき上ってしまった溶血性貧血という現実をなおすための対策で,胎児の溶血をおこす原因は何ひとつ治療していないことになります。この原因をとり除けない理由は,Rh式血液型の抗Rh抗体は免疫グロブリンGの抗体のために,母体にできると全てが胎盤を通過して胎児に移行してしまうために,これを阻止できないことから,現実にでき上った胎児の溶血性貧血を改善するしか手がなかったのです。ところが,数年前から血漿交換という手技が開発され,母体の血液をいったんぬいて,この血液を血球成分と血漿成分に分け,血漿をすてて,新しい血漿にそのひとの血球成分をまぜて新たな血液を作り,これをまた本人に帰してやるということができるようになりました。こうすると,抗Rh抗体は血漿中に含まれているので,血漿をすてればそのひとのからだからは抗Rh抗体はなくなることも可能となったのです。世界中で,重症のRh式血液型不適合妊娠における母体感作例が,ずい分とこの血漿交換で元気な新生児を得られるようになりました。
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