特別企画 産後神経症の周辺
ケース・レポートを読んで
保健婦の立場から
褥婦の精神不安と生活環境
久松 春代
1
1松戸市衛生部健康管理課
pp.487-489
発行日 1977年8月25日
Published Date 1977/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205247
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はじめに
親に捨てられたり,置きざりにされて全国の乳児院に入っている乳児は,毎年約5千人にのぼると言われている。また,子殺しなどもいまだ横ばい状態にある中で,マスコミではこれらを母性喪失,意識の欠如としてとり上げている。しかし私共は日頃の保健婦活動を通して,これらの問題行動をひきおこす原因が,単に母性喪失や,母性意識という意識の問題ではないことを感じている。
育児ノイローゼや育児不安を呈している時期は,母親側からみると産褥期にあたる。産褥期は,内分泌の変調や自律神経の撹乱で精神不安が大きい時期である。昔は産褥婦に対して,精神的刺激を与えてはいけないということで,周囲の人人は種々配慮したものである。しかし現在では,特に都市化の中では,核家族化が進み,周囲から孤立した生活環境の中で,褥期はあらゆる刺激にさらされていると言える。このような中での精神不安であり,育児ノイローゼが大きいように思われる。
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