特別企画 産後神経症の周辺
ケース・レポート
産後神経症の看護と母親教室
久松 憲二
1
,
山村 一二三
2
1国立津病院精神神経科
2国立津病院産科病棟
pp.470-472
発行日 1977年8月25日
Published Date 1977/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205243
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はじめに
母親教室は母子保健活動の1つの柱として近年重要視されてきたが,ともすれば医学知識のみが先行し,精神的な面への配慮に欠けることが多い。特に核家族化による姑の役割消失は心理的な面において顕著である。結果は,新生児に対する責任感の弱さと快楽追求型の社会的風潮が育児労働からの逃避を生み,極端な場合は乳児殺害にまで至ることは新聞紙上に多く見られる通りである。しかもそれらは氷山の一角に過ぎず,実際にはかなりの数の育児ノイローゼの母親が存在するというのが私たちの実感である。
一般に産後精神病の症状は多種多様1)で,「錯乱状態」や「幻覚妄想」を来たすものから「うつ病」の形をとるもの,「困惑状態」や「離人症」あるいは単に「自律神経失調」のみを訴えるものまで,幅は広いが,出産後の内分泌的変動2,3)と特有の未熟な人格構造を背景にし,適切な治療によれば予後は決して悪くはない。
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