産科医がみた世界の素顔・6
新中国,特に教育および医療とその背景(6)
品川 信良
1,2
1弘前大学医学部産科婦人科学教室
2弘前大学医学部医療技術短期大学部専攻科
pp.361-365
発行日 1977年6月25日
Published Date 1977/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205223
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第8章 中国はスローガンと常識の国でもある
スローガンと中国
中国に行って,一番驚かされることの1つは,どこに行っても,およそ人目につくところや,人の出入りの多いところには,この国や党のスローガンと,毛沢東主席の写真,肖像画,語録,詩などが,色鮮かに掲げられていることである。(ただし,写真や肖像画が飾られているのは,毛主席のだけではない。マルクス,エンゲルス,レーニン,スターリンなどのものも,少なくない。しかし,その大きさやデラックスさにおいては,毛主席のそれには到底及ぼない。またこの種のことは、中国に限ったことではなく,新興国,社会主義国,全体主義国などには,なかばつきものである。かつての日本も,その例にもれなかった。)
毛主席の写真や肖像画や語録や詩は,まだしもとしても,スローガンの類いがまことに多いのには,全くおそれいる。空港,目抜き通り,大きな建物の屋上はまだしもとしても,学校の入口,教室のなか,病院の入口などに至るまで,人目につくところは,たいてい,スローガンの大字のなかに埋まっている。これを日本やアメリカにたとえるならば,電気製品,建築会社,金融機関,カメラ,石油,自動車などの宣伝のネオンや看板が全部,中国共産党の戦術や戦略上のスローガンや,国民を励ましたり教育したりするためのモットーになったと思えば間違いないくらいである。
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