特集 妊婦貧血の問題をとらえる
妊娠貧血と薬物療法の知識
保刈 成男
1
1日大医学部薬理学教室
pp.34-37
発行日 1973年7月1日
Published Date 1973/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204548
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貧血というのは,「単位容積血液中における赤血球数,血色素量の減少した状態」である。つまり,赤血球では血液1mm3中の数が,血色素では血液100ml中の量が,正常値あるいは正常動揺範囲以下になった状態を貧血というわけである。
ここで注意すべきは,減少とはいってもそれはあくまでも相対的なもので,血液のほんの一部を採って測定しているにすぎず,全血液中のものを測っているわけではないということである。したがって体内血液量を考えに入れておかないと,測定された赤血球数・血色素量の意味づけを誤ることがある。たとえば急性出血では,血漿と血球成分が同時に失われるため,実際には貧血状態にあるのに,出血直後では赤血球数・血色素量ともに正常値を示すことが多い。2〜3日たつと組織水分や補液のため血液容積が補われるため,初めて検査の上では貧血を認めるようになる。また,脱水症では血液水分が失われて血液は濃縮されるため,赤血球・血色素の減少は認められず,一見貧血はないようにみられることがある。
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