特別寄稿
産科百話 その2
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.43-45
発行日 1971年9月1日
Published Date 1971/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204208
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□□卵20個食べて膵炎になった妊婦□□
救急車が妊娠10カ月末の妊婦を,けたたましくサイレンを鳴らしながら運んで来た。ものすごく,お腹が痛くなったというが,診察してみると子宮体は緊張は高いが,陣痛ではないらしい。子宮口も閉鎖している。痛みはお腹全体で持続性で,熱も38.0℃と上昇している。妊婦は本当に相当の疼痛があるのでしょう。青ざめて,冷汗をかき,口もきけないで転げまわっている。正常位胎盤早期剥離にしては,児心音もはっきりしているし違うようなので,外科の先生とも相談し,いちおう急性腹症ということで入院させ,ともかく疼痛をなくすために麻薬を打ち,いろいろの検査をしてみることにした。
翌日になって検査成績がそろうと,血清および尿中のアミラーゼ値がひどく上昇していることが明らかになり,急性膵臓炎であることがわかった。これから2日間その方の治療を外科と共同で行なったが,腹水もたまってくるような重症なので,外科医とも共同で開腹し,まず帝切で胎児を出し,あとは膵炎の治療のためのドレインを入れようということになり,そのように手術を行なって,とにかく一命をとりとめた。もちろん,母児ともにである。妊娠中の膵炎は非常にめずらしいが,激症型が多く,予後が悪いといわれている。私たちの病院でも数年前1例の妊婦がこれで死亡している。ここまでは何ともないが,この妊婦がなぜ,膵炎になったかというお話しがまた面白い。
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