婦人ジャーナル
過保護時代 大流行の誕生パーティー
山主 敏子
pp.65
発行日 1971年5月1日
Published Date 1971/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204137
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過保護時代
ペットブームで愛玩用の小型犬を連れている婦人を,よく街で見かけるようになった。いかにも人工的な形に毛を刈りこんだプードル,雪のように白い長い毛のマルチーズ,まき毛に赤いリボンをつけたワイヤードテリァなど,見るからに生きているおもちゃという感じの犬たちである。それらの犬たちが,シャンプーしたり,毛を刈ったり,オーデコロンまでふりかけてもらったり,犬専門美容院の化粧代が,1回3,000円から5,000円ときいては,パーマ代の値上りにいっそ髪を伸ばしちまおうかなどと思案投首の女性にとっては,羨ましいような話である。
犬のおしゃれはそれだけではない。ワン公の洋服にもニューモードがあって,これからの流行のトップはシースルー,柔らかなあんよで石コロ道など歩かせてはいたましいと,はかせるクツが3,000円とあっては,何をかいわんやである。これほどに優遇されれば,犬冥利につきようというものだが,さてワン公の身になれば,ありがためいわくなしだいで,ワン公のボーイフレンドは,いっこうしゃれた洋服などほめてはくれないだろうし,かゆいところをかくこともできず邪魔っけなだけであろうし,固いところを踏まない足の裏はますます皮が薄く弱くなるばかり,この過保護のワン公たちの,なんとひよわに悲しげに見えることであろう。
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