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大阪市で開催された第22回日本産科婦人科学会総会のシンポジュウムに「胎児胎盤系とエストリオール」という主題がとりあげられました。胎児と胎盤はお互いに切りはなして考えることはできなく,胎盤は胎児の体外臓器であるとまでいわれています。従って,両者を合わせて研究しようという意味もあって,今日では胎児胎盤系feto-placental unitということばが使われるようになりました。そして,母体内に存在するエストリオールというホルモンの代謝産物が,非常によく胎児胎盤系の様子を私たちに教えてくれることが最近になってわかってきましたので,エストリオールという物質に関する研究が一段と注目されるようになったのです。
エストリオールという物質は副腎などで作られるステロイド・ホルモンから変化して生じたものですが,妊娠すると胎児自身の副腎でも生産される一方,母体でも,胎盤でも作られるので,妊娠していない時よりも妊娠した場合の方がずっと母体の含有するエストリオール量は多くなります。これが非常に少ないと胎児死亡を起こしたり,胎盤機能不全症候群といって,胎児の発育が非常に障害されている状態を示すことになるので,私達は母体の尿中のエストリオール量を測定することにより,その胎児,胎盤系の状態の良し悪しを推測できるのです。今まで,胎盤の機能とか状態を知る方法がなかったので,非常にこの方法は私達産科医に光明を与えてくれたように思えましたが,その測定法が困難であったりしてまだまだ一般的に行なう段階までは進歩していません。しかし,今回は,この方面の研究をつんでおられる方々が,いろいろと研究成果を発表され,その日の近いことを知らされました。そのなかから少しお知らせすることにします。
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