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分娩を取り扱う者なら一生のうち1度は必ず自分が生ませた新生児が生後1〜2日して「けいれん」を起こして死亡するという事態にぶつかるであろう。というよりはけいれんを起こした新生児はなかなか助からないというのが私達の通念でもある。今月は新生児のけいれんの話題を追ってみることにする。
まず新生児のけいれんは生後すぐに,まだ分娩室にいる間に起こるということはないといってよいだろう。一般には生後6時間ぐらいはすぎてから発症するものである。このように出生後割合早くけいれんをみる症例は,分娩による障害,すなわち無酸素症,頭蓋内出血によることが多いとされている。したがって,出生時の仮死状態からひきつづいて起こるものである。また,生後早くにみられるけいれんの症例はすべてが頭蓋内出血などの不治の疾患によるものであると考えるのは大きな誤りである。というのは,新生児に無酸素症,つまり酸素の不足した状態がおこると,脳の神経組織は浮腫を示す。この浮腫が起こった程度でも新生児は「けいれん」のような中枢神経系症状を示すのである。さらに,無酸素症の状態がつづけば,頭蓋内出血のようなどうしようもない事態に発展する。したがって,生後間もない頃のけいれんの症例ではその病変は脳浮腫ぐらいになるので,積極的に治療にはげむべきである。無酸素症を改善するために十分に酸素を投与し,脳浮腫を治療するために高張の糖液や少量の利尿剤などを用いる。そして,脳浮腫の状態が改善されれば,けいれんをはじめとする中枢神経系症状は消失し,おそらく無酸素症による後遺症もみられないであろうと考えられる。この点からも,治療は早く開始した方がよいし,あきらめないで行なうとよい。
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