連載 講座 母子保健・3
母子保健活動と助産婦の役割
近藤 潤子
1
1東京大学医学部母子保健学教室
pp.47-50
発行日 1970年6月1日
Published Date 1970/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203941
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助産と助産婦のはじめ
分娩の際に助産が行なわれたことは紀元前に書かれたものにすでに記述されている。わが国においては助産学書ごあたるものも残されている。しかし長い間一般の分娩の大部分は,近親者,近隣の馴れた人,慣習的分娩取扱人(Traditional Birth Attendant)によってとりあつかわれていた。大和時代(8世紀)には助産を職とするものの養成が,律令によって制定されたことが知られているが,その時代の分娩を扱うもののすべてが系統的に教育されたとは思われないので,助産の技術は口伝,見習い,経験を通じて習得されていたと考えられる。助産婦として体系的な訓練を試み業務の規制が行なわれるようになったのは,14,5世紀にフランス,ドイツに端を発している。
いずれの場合も助産に関しては分娩の介補を中心とする技術がすすめられてきたのである。しかし,近世,予防医学の重要性が認識されてからの業務は母子保健活動の中で分娩のみにとどまらず妊娠,産褥の管理から婚前教育,家族計画なども含めさらに広い観点から,人間の生殖の問題をとらえるように要求されるようになり,業務の範囲が幅広く拡大された。
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