インターホン
近づく冬を待ちわびて
中村 珪子
1
1山形市立病院済生館
pp.45
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203469
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冬.北国に住む私にとって冬は身の縮む思いの,いやな季節であった.寒々とした空.降りつもる雪.それらをうらめしく思いながら春の近づくのを日に日に待ちわびる何年かを過してきた.しかし冬は毎年やってきて私も若さに別れをつげる年齢となった.そんな冬のある日,横浜にいる助産婦学生時代の友人から,スキーに蔵王を訪れる旨の便りを受けとった.めったに訪れることのない友人の来訪を,雪の下に春の草を見た想いで喜こんだものの,私はスキーができなかった.さて困った.せっかくの来訪を歓迎する意味でも友人とともに楽しむためにも"スキーができないの"ではいられない.そこで友人がくるまでの短期間に,どうにかスキーができるようになるにはスキー学校に入る以外方法はないと思い,老体にむち打ってのスキー学校入学と相成った.
スキーのはき方すら知らない初心者が,長いスキーをつけ吹雪をついての強行軍には,たびたびねをあげそうになった.ふだん運動をしていない身体は痛み,加えて神経の鈍さが思うように身体を動かしてくれない.失敗に失敗を重ね,自分に腹立たしさを覚えながら3日間は終わった.緊張から解放されほっとしたものの,ほんの基礎を習得しただけで,これで思うように滑ることができるかどうか全然自信がなかった.
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