現代のカルテ
敗けいくさ
野口 肇
pp.48
発行日 1965年9月1日
Published Date 1965/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203046
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あいかわらず毎日の新聞は,南ベトナムで息づまる死闘のさまをつたえています.また17度線をこえた北ベトナム(ベトナム民主共和国)への連続爆撃も,いまでは日課になっています.新鋭のジェット爆撃機の大編隊が,台湾海峡あたりに集結している第7艦隊の空母から発進し,さらには沖繩基地から,すすんで最近では太平洋のグワム島から出動しています.そしていわゆる北爆は,北ベトナムの首都ハノイをこえて,中国との国境にまでのびています.アメリカの軍事用語にいうエスカレーション(段階的戦争拡大)です.1歩あやまれば米中戦争,ひいては第3次世界大戦へ,まったくハラハラさせられる局面です,じじつアメリカの軍当局では,中国攻略の青写真をつくっています.さいしょの目標は北京,上海,天津,広州など6都市と新彊省にあるといわれる原爆工場だそうです.ついで中国の東南海岸から大量の地上部隊を上陸させる.抵抗にあえば原爆をつかう——仮定とか想定の作戦ではない,真剣に考えているからぶっそうです
もともとアメリカは1954年のジュネーブ休戦協定いらい,おととしクーデターで殺されたゴジンジェムをかついで南ベトナム政権をつくり,これに大量の軍事援助を行なって,ベトナム民族解放戦線(ベトコン)とたたかわせ,じしんは表面にでないで背後から指揮していました.
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