特集 世界のなかの綜合保健
海外事情
北欧の綜合保健—その考え方と実情
吉田 すみお
1
1国立公衆衛生院社会保障室
pp.88-93
発行日 1965年2月15日
Published Date 1965/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202993
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Ⅰ.北欧社会の一瞥
いま,スウェーデンの開港商工業都市イヨツテボルイの一地区Kortedalaを訪つれたとする。赤松と楡にかこまれたこの地域へはいる途上に高い煙突が目につく。酷寒対策として,ところどころにみられる熱湯供給プラントである。ここからの給湯管による町ぐるみ煖房が行なわれている。町の中心はショッピング・ビジネス・カルチュアラル・センターになっていて,大都市の中心なみの良質の日用品が同じ値だんで買えるし,日常の用件はほとんど能率的に足せる。
小・中・高・専門学校もセンターわきにあって,一学級20名足らずで,図書室,資料室,工作室,実験室,給食施設などがよく整えられている。とかく気候にめぐまれないので,年中つかえるプール附の大きな体育館もある。もちろん学校医,歯科医,看護婦など保健職員も充実し,健康教育が大いにすすめられており,保健室,休養室……かわったものでは,太陽燈浴室……なども整備されている。弱視,虚弱児,難聴,慢性病などのある学重や生徒には特別クラスが開設されており,一般の学校給食の外に,スペシァル・キッチンで腎臓病や糖尿病など食事管理のいる子供にサービスしている。これらサービスは無料で,また学用品も支給されるし,上級学校も授業料はなく遊学のための奨学金制度も充実している。そして,両親が健康な場合でも16歳までは,すくなくみても養育費の半額を賄なえるに足る,児童手当がすべての子供に保障されている。
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