巻頭随想
母性保健の前進へ
瀬木 三雄
1
1東北大学公衆衛生学教室
pp.9
発行日 1965年4月1日
Published Date 1965/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202941
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訂正出生率は世界文化国中最低,妊産婦死亡率は最高.——かつて日本の国は,出生率は最高でないにしても,高率国で知られていたし,また一方妊産婦死亡率はその低率を誇っていた.しかしわれわれが戦後はじめて入手した外国の数字は,容易ならぬ前途を暗示していた.彼我曲線の交叉が予見されていた.私は厚生省母子衛生課長を去った.予想はすでに事実となっていたにもかかわらず,厚生省の担当者は,日本の妊産婦死亡率は低いから放置して可なりという放言をなしていた.
今,母性保健再興の与論は大きな波となってもり上がってきた.戦前の場合と同じく,木下正一博士と森山豊博士の執拗な前進,努力が,ここに新しい母子保健法の制定にこぎつけた偉大な功績は,後世の人びとにとって忘れ得ないものとなるであろう.
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