巻頭随想
両親と医師の努力
駿河 敬次郎
1
1賛育会病院外科
pp.9
発行日 1963年8月1日
Published Date 1963/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202584
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つい最近まで,わが国では,治癒の見込がないとされていた先天性食道閉塞症,腸閉塞症,あるいは重症の先天性心臓疾患などの新生児期に緊急手術を必要とする病気が,今日小児外科の手術が行なわれている病院では,さほどむずかしい治療ではなくなった.これは新生児手術のさいの麻酔,手術々式,手術前,手術後の管理などが著しく進歩していることなどにも原因しているが,同時に,生後間もない新生児で,いそいで手術をしなければならない病気が比較的早く発見されて,手術されるようになったことも重要なことであろう.
このようにわが国で,新生児外科についての関心が,次第にたかまっているとき,先日フィンランド・ヘルシンキ大学小児外科スラマー教授をむかえて,サリドマイド奇形児の手術が行なわれ,各方面に大きな反響をあたえた.スラマー式手術は彼の独特の創意で,サリドマイド奇形児,とくに手が直接肩についていて,上肢としてまったく使用できない重症の奇形にたいし鎖骨を利用して,上肢としての機能をあたえようとするものである.しかしこのようなサリドマイド奇形児の専門的な問題と関連して考えなければならないことがある.
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