巻頭随想
私の夢
田中 志ん
1
1看護協会助産婦会
pp.9
発行日 1963年7月1日
Published Date 1963/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202564
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子供の頃よく千里眼ということをきいた時,私はいつも夢のようでばかばかしいと思った.ところがその夢だと思ったことはすでに実現し千里はおろか数千里離れた国のことまでコタツの中でみたり聞いたりできるようになった.そして空にはロケット,人工衛星とどこまで発達するのかおそろしいくらいです.
それと同時に医術もすばらしい進歩ぶりで心臓の手術,眼球の手術と2,3の病を除く外治療のできないものはなく,急激に死亡率も減少しております.そこでつくづく私どもまず開業助産婦の姿を眺める時これでよいのか助産婦斜陽という声をきくのも仕方ないことです.一般教育が高められしたがって衛生思想が向上し,お産に対する考え方も変わって,若い母親となる女性が求める出産の場所は設備の完備と扱う人の内容の充実を要求していることは明らかです.そのため入院分娩がふえ特に都市の助産婦は開業休業状態にあるものが多くなったのです.せっかく尊い技術を持ちながらこれを活用する場所を失って社会的にも大きい損失であるのです.
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