特集 環境保健教育
社会教育の中の環境保健教育
相磯 富士雄
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.56-59
発行日 1975年1月15日
Published Date 1975/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204947
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環境汚染物質による日本人の体内汚染は,世界に類をみない高度のものである.たとえば,農薬であるβ-BHCの体内蓄積量は,欧米人の30倍近い高濃度であると推定されている1).また,1972年7月から8月にかけて厚生省でおこなった母乳中のPCB濃度の検査の結果では暫定的人体許容濃度5μg/kg/日をこすものが約3割あった.1971年のFAO/WHOの報告で「12週間以内の乳児は,解毒機構,組織透過性その他の防衛機構が発達していないため,成人では問題がない物質にも対処できないことがある.したがってその食品には食品添加物を一切加えない方がよい」としている現状においてである.まがりなりにも動物実験で,限定づきではあるが安全性を確認している食品添加物にさえこのような警告がだされているのに,β-BHC,PCBのみならず他の多くの重金属や有毒化学的合成物質も人体内に蓄積され母乳に含有され,新生児に哺乳されている可能性は恐るべき状態である.このような状況下で,都市「公害」,産業「公害」,農村「公害」,食品「公害」,自動車「公害」,等々公害の規模は量質ともに拡大深化され国民の多くは言いようのない不安におそわれている.
東京での世論調査では,健康,疾病上の関心事は環境保健上の問題が医療上の問題を圧倒しているのが現状である.
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